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とある『人間の盾』経験者の手記。
03/25 23:20 Maki K Wall@駐米特派員


今回のイラク戦争で一躍注目を集めているのが Human Shields と呼ばれる活動家達。もちろん、過去の軍事介入でもこの『人間の盾』は存在しましたが、今回の戦争では女性を含めた何人かの日本人の方達が、バグダッドの現地から取材を受けたり、ホームページで状況を伝えたりしているので、知名度が随分上がったようです。

さて、反戦を掲げて活動する『人間の盾』。この関連記事で最近、ひとつ個人的に注目した記事がありました。

イギリスの新聞 Telegraph が掲載したこの記事は、実際に今年一月にボランティアとして『人間の盾』に参加し、バグダッドにも滞在した23歳のユダヤ系アメリカ人写真家、ダニエル・ペッパー氏の手記です(原文記事は英語ですので、内容をかいつまんで訳しますね)。

彼は反戦家としての立場から『盾』に志願しました。イラクには5週間滞在しましたが、その間、反戦思想に逆行するもうひとつのスタンスが自分の中に生まれたと告白しています。

ペッパー氏らは出発前、米英の政策に反対している自分達は「イラクの人達に同情的である」と信じていました。しかし、サダム・フセイン政権の下に生活している国民らの口から出た衝撃的な言葉の前に、自分達はイラク人の「一体何に対して」同情していたのか、そんな事はまるで考えていなかった自分に気が付いたのだそうです。

とあるタクシーの運転手は「ブッシュは悪だ。戦争は悪だ。イラクは善だ!」と訴えるペッパー氏を一瞬不審そうな表情で見つめた後、静かにタクシーを止め、フセイン政権に反発する市民は家族ごと殺されるなど、そういった恐怖の独裁が続いている状況を説明しました。

さらにペッパー氏らはこの運転手や他に出逢った市民の多くが、実はイラクを捨てて逃げ出したいのだと感じ取り、驚きます。

また、他のドライバーに「空爆の恐怖は無いのか?」と聞けば「ラジオのパウエルさんの言葉を聴かなかったのか?アメリカは一般市民は攻撃しないはずだ。俺達はフセインが空爆で滅びることを祈っている。」と答えが返ってきました。

さらに、何人ものイラク人から「お前達はどうせ、フセインから金を貰ってここに来たんだろう?一体いくら支払われたんだ?」とあしらわれ、「そんな事はない」と反論しても誰一人として信じてくれなかったそう。

もちろん、全てのイラク人からこういった「反フセイン政権」的思想を持っているわけではありません。しかし、今まで疑いを持たずに信じてきた「イラク像」からかけ離れた現実に触れ、ペッパー氏は打ちのめされてしまいます。

そしてイラク滞在後は、世界各国で起こっている反戦運動とイラク国内の生の声に、激しい温度差を感じてしまっているとか・・・・。

実際、イラク滞在後に取材したとある反戦デモで、深く考えもせずに「NO WAR!」と叫ぶ群衆、そして一部とはいえ酒を飲み、陽気に踊りながら平和そして反戦を訴えるデモンストレーター達に、ペッパーさんは強い違和感を覚えずにはいられない、と記事の最後に書いていました。

『人間の盾』として活動している人達全員が、ペッパー氏のような経験をしたわけではないでしょう。今現在バグダッドに滞在してる『盾』達は実際の空爆の恐怖の中で、さらに平和への願いを強めているかもしれません。

しかしペッパー氏が短い滞在で知ったイラクも、確かに存在するその国の姿です。「イデオロギーだけで反戦を訴えていた愚かな自分」に気付いた彼のメッセージには、何か考えさせられるものがありませんか?

たった一つの視点からだけでは戦争は語れません。戦争反対!と叫ぶだけなら容易いですよね・・・・本当に。




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