儲け主義を否定する無料音楽配信サイト「mF247」を直撃 その1。

2007/09/20(Thu) 01:46

EPICソニーの創始者にして「プレイステーション」の生みの親、ソニーグループが誇るエンターテイメント分野の発展に大貢献し、多くのミュージシャンを発掘してきた丸山茂雄さん。同社退社後に選んだフィールドは、インターネットでした。しかも、参加アーティストの楽曲が無料でダウンロードできるというから驚きです。その丸山さんの新たな挑戦の場である「mF247」が、今年で開設から3年目を迎えました。9月15日にはMozilla主催の全世界同時配信音楽フェス「Firefox Rock Festival '07」のサポートも行い、大成功を収めています。今回の特集は、丸山さんへのインタビューやフェスの模様、出演アーティストへのインタビューも紹介しながら、「mF247」について探っていきます。

「mF247」は参加アーティストが楽曲やプロフィールなどを登録し、リスナーはそれを無料でダウンロードできるというサイト。インディーズバンドから、忌野清志郎や大江慎也、爆風スランプなどの大物までが参加し、丸山さんが沖縄に移住したことから沖縄出身のアーティストも多数。大御所・登川誠仁の楽曲も無料で聴けちゃうのです。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに準拠した楽曲も公開しています。

mf247のサイト

ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)時代には、他社に先駆けて音楽配信を手がけた丸山さん。ここで得たノウハウを生かして「mF247」を立ち上げたのですが、最初は悪戦苦闘していたようです。それを救ったのは「Web2.0の力」でした。

「『mF247』を始めるにあたってニューズ・ツー・ユーの神原さん(弥奈子社長)に勧められてブログを始めたんだけど、産経新聞にミューズ・アソシエイツの梅田望夫さんが月に1回コラムを書いてて、それがオレがやろうとしてたことに近いなと思って。そのことをブログに書き始めたら、本人からコメントがあってね。それを見た人たちがどっさりと情報が寄せてくれた。だから、「mF247」の立ち上げは音楽関係者じゃなくてインターネット系の良質な部分の人たちがサポートしてくれたって感じかな。いままでは大きな会社だったから、優秀なスタッフが何人も集まって業界の問題点を洗いざらい研究する。今回はオレが調べてって言ってもスタッフが1人しかいない。でも、スタッフじゃなくてネットの人たちに助けられるなんて、すごく新鮮だったよ」

「荒らし」や「炎上」などの被害に遭うブログが連日のようにニュースになっていますが、多くのネットユーザーが丸山さんの志に賛同して協力したのです。丸山さんは「ああやれ、こうやれって、みんなお節介なんだよな」なんて言ってますが、こうした善意に対して驚くとともに、深く感謝しているようです。

「そうやってみんなの意見を聞きながら組み立てていくうちに、セコく稼ぐことができない仕組みになっちゃった(笑)。でもね、セコく稼ぐってことは、やっぱりセコいわけじゃない? やるんだったら志高くやりたかったからさ。そういう風にしてきたから、割とみんな支持してくれていると思うんだ」

「いまさら下品なことをしたくない」と一貫して儲け主義を否定している丸山さん。「mF247」の開設にあたって、「『儲けることを考えるな』と命令された」というスタッフの証言もあります。その姿勢が多くの共感者を呼び、それが丸山さんの目指す方向へとさらに加速させました。しかし、こうしたサポート得ながらも勉強をしなけらばならないことは山積み。ある程度年齢を重ねると新たな分野を学ぶことに抵抗を持つ人が少なくないのですが、60歳を超えながらも好奇心や意欲が旺盛な丸山さんにとって、それは何の障害にもならなかったようです。

「始まる前はビジョンだけだから元気よくできるじゃない。だから、勉強することに何の抵抗感もなかった。でも、やってみたら問題点がたくさん出てきちゃった。頭のいい人ならどういう問題点が出てくるか予想するんだけど、オレは予想しないから(笑)」

こうしたところも、丸山さんが人を惹きつける魅力なのかもしれません。そんな丸山さんが「mF247」で実現したいことは何なのでしょうか。

「『mF247』は、ミュージシャンが好きなように路上で演奏し聴き手が好きなように選べる場、つまり現在は規制された原宿の『ホコ天』をネット上で提供している。対象にしているミュージシャンは、テレビに出ることやCM・ドラマのタイアップを取るが難しい新人と、ライブ以外に新曲を発表する場のない元大物。こうした人たちが「mF247」の仕組みを使って、もう一度マスメディアが使えるような旬のアーティストになってくれるようになったら、それが望ましいよね。すると、ますます新人や元大物たちが使ってくれるようになって、集まればユーザーもいい音楽を探しに来てくれるようになる」

ミュージシャンとリスナーが直結できる場の提供。それが「mF247」の基本です。そして、あくまでこのスタンスを守っているため、ミュージシャンからもリスナーからも絶大な信頼が得られているようです。

「ミュージシャンには『丸山のところだったらアコギなことをしないだろう』って信頼してくれているみたいだし、ポリシーは崩すようなことはこれからもしない。まあ、かっこいいこと言い過ぎて後に引けなくなっちゃったっていうところもあるんだけどね(笑)。でも、それは最後までやり通したい」

そんな「mF247」にとって、開設以来最大となるイベントが9月15日に開催されたました。それが「Firefox Rock Festival '07」です。このイベントをサポートするに至ったきっかけは、9月13日に正式発表されたクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの導入だったそうです。

「ライセンスの導入にあたってクリエイティブ・コモンズと話を進めていたんだけど、その関係からMozillaが「Mozilla 24」という世界的イベントを開催することと、そのイベント内で音楽のイベントをやりたいということを聞いた。で、その音楽イベントに出演するアーティストを紹介してほしいっていう依頼があったんだよ。それが6月後半。初めはその期間では実現不可能だって断ったんだけど、ぜひやりたいということで、全力で取り組むことにした」

3カ月の準備期間でイベントは大成功を収めました。それはとりもなおさず丸山さんとスタッフの努力の賜物。アーティストの出演交渉は、たった2週間で終えるという電撃的なものでした。

「『Firefox Rock Festival '08』も、実はオファーが来ている。今回は日本だけだったけど、米国のスタッフがかなり燃えてるみたいで、来年は日本、米国、欧州の世界3カ所で同時にやる計画が立っているんだよ。実は、今回の会場に『SHIBUYA BOXX』を選んだのは、近辺に『SHIBUYA AX』や『C.C.Lemonホール(渋谷公会堂)』、代々木体育館、代々木公園があるから、今後大きくなっても対応できるからなんだ。半分冗談だけどね(笑)」

東京・渋谷でSUMMER SONIC規模の音楽フェスティバルの開催、音楽ファンとしてはぜひとも実現できるよう願っています。

「ネットで儲けないんだったら、どこかでお金を得なければならない。そのためには、プロダクション的な活動もしていこうと思っているよ。「mF247」に参加してくれているミュージシャンは全部フリーなわけではないではないけど、もしどこに所属したらいいか分からないという学生バンドなんかがいたら、「じゃあ、オレとやらない?」って声をかけるつもりでいる。他のプロダクションに紹介したりウチでアルバムをリリースしたりはしてるけど、まだプロダクションの活動はしてないんだけどね」

さまざまな構想を抱き、アイディアの尽きることのない丸山さん。Narinari.comでも以前ご紹介した“47秒・着うた専門曲”を提供している「47(ヨンナナ)」など、これからどんどん発展していきそうな「mf247」に期待です。

つづく

http://www.mf247.jp/(mF247)




 

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