ぶらり宮崎、グルメ旅 Part2

2005/02/08(Tue) 02:22

「焼酎天国」宮崎市の繁華街

 宮崎市の繁華街はひと味違います。東京では店の看板の下や横に日本酒のメーカーや銘柄が入ってるものですが、こちらは全部焼酎なんです。看板どころか、アーケードのゲートや街灯の下にも焼酎のオンパレード。「この通りは右半分が『霧島』で有名な霧島酒造、左半分が『天孫降臨』で有名な神楽酒造の縄張りなんですよ。ビミョーに勢力争いしてるんです(笑)」と、今回の案内役を引き受けてくれた放送局勤務のYさん。


ネオン街へ

「霧島」の看板

「天孫降臨」の看板

看板には焼酎の銘柄

こちらも焼酎

有名な「霧島」ブランド

 宮崎では、居酒屋だろうがカラオケだろうが、バーだろうがキャバクラ(宮崎ではキャバクラのことをラウンジというのだとか)だろうが、どこでも一定の種類の芋焼酎が置いてあるんだそうです。合コンでも最初からビールやカクテルではなく、有無も言わさず芋焼酎のボトルが出てくるのだとか。「いきなり焼酎ではお酒の弱い女の子はきつくないですか?」とYさんに聞くと、「宮崎では、女の子だろうと『焼酎なんて飲めな〜い』というのはプライドに関わることなんで絶対に言いません!」とのこと。どおりで九州の女の人はお酒が強いわけだ。

 さて、ネオン街で最初に連れていかれたのは、なんの変哲もない焼き鳥屋さん「炙りものまかない料理 ひよし」。東京でよく見かけるような、ちょっとおしゃれ目のお店です。


店舗外観

看板

焼酎がズラリ。しかも安い

 ところが焼酎の安さにびっくり。幻の銘酒「百年の孤独」がグラス1杯550円! 東京だったら700〜1000円はする代物です。また、「霧島」や「天孫降臨」などは320円均一とこれまた嬉しい値段。だいたいどこの店でもこの値段で飲めるのだそうです。まさに焼酎天国。そして、肴も日向地鶏や宮崎牛のオンパレード。贅沢です。

焼酎の飲めるバー「Bar Vintage」

 続いて訪れた店は、「Vintage」という昨年の6月に開店したばかりのおしゃれなバー。弱冠26歳のオーナー大富さんは、学生時代に東京・新宿のバーで修行し、地元のバーでもしばらく修行したあとに独立しました。なかなかのイケメンです。


大富さん

Vintageの店内

 実はこの大富さん、Yさんの従兄弟の同級生なのです。大富さんはとても温かく気さくな方で、出会ったばかりの私たちとすぐに打ち解けました。それだけでなく、「東京から美味しいものを探しに来ました」という私たちに対して、店にいた常連さんたちも交えて「あそこが美味い」「いやこっちのほうがもっと美味い」などとアドバイスをしてくれるなど、とても和やかな雰囲気で店の客が一体化していました。そして、いつしか話題は宮崎の芋焼酎へ。「みなさんはもう(宮崎に着いてから)焼酎は召し上がりましたか?」と大富さん。

「さっき居酒屋さんでいただきました。いやあ、安くてびっくりですよ。それだけじゃなくて、『霧島』も東京で飲む『霧島』より美味しく感じるんですが(笑)」
「気候が芋焼酎に合ってるからですかね(笑)。東京に比べれば安いですよね。霧島以外には何を召し上がりました?」
「えーと『天孫降臨』と…『百年の孤独』くらいですかね。あ、こりゃ芋焼酎じゃないや」
「そりゃあダメです。宮崎にはあまり県外に出ない焼酎がいっぱいあるんですよ。『日南娘(ひなむすめ)』に『ひとり歩き』、『海』……。そして、そのなかでもオススメなのがコレ」


コレ?

 そう言って出された瓶は、細い紙が貼ってあって何か書いてあるのですが、白い和紙でくるんであるのでよく見えません。すると常連さんが口々に「ナイナだ」「うん、ナイナだ」「いいねえ」と言っていました。飲んでみると、芋焼酎特有のとっつきにくい臭さがないのに、芋らしいまろやかさがたまらない! 焼酎でした。

「これは『?』と書いて『ないな』と読む焼酎です。『ないな』は宮崎弁で『なんですか?』という意味なんですよ。今、宮崎の焼酎好きの間で人気ナンバー1なんです」

 1人当たり焼酎消費量日本一である宮崎県民のなかのさらに焼酎好きの人たち「しょちゅくれ」が認めるとは。でも、飲んで納得です。そして、大富さんの焼酎トリビアも聞かせてもらいました。

「芋焼酎というのは鹿児島で生まれたんですが、たいがいの本格焼酎はアルコール度数が25度なのに、宮崎の焼酎は20度が主流なんです。これは、沖縄の泡盛と深い関係があるんですよ」

 戦後、沖縄から宮崎へ多くの人が移住したそうで、その沖縄から移住した人たちが密造酒、つまり“ヤミ泡盛”をつくり始めました。しかし、当時は米がないので仕方なく芋で醸造したのです。泡盛は20度なので、移住者たちも20度で芋の焼酎をつくりました。この“ヤミ泡盛もどき”が県内で飛ぶように売れ、税金を上乗せした正規(25度)の焼酎がまったく売れなくなってしまったのです。困り果てた政府は、宮崎県だけ特例で税金の安い20度焼酎の販売を許可しました。これが“宮崎の焼酎”になったそうなのです。うーん、明日使えるものばかりですね。

突然の「行列のできる店」

 楽しい話で盛り上がっていたのですが、夜も更けてきたので大富さんと常連さんにお礼を言って、私たちは「Bar Vintage」をあとにしました。この店、大富さんが中学・高校・大学と野球部だったので、キャンプに来た同級生の野球選手もお忍びで顔を出すそうです。キャンプシーズンに訪れたら、有名選手の素顔に出会えるかも。でも、あくまでプライベートですので、マナーはきちんと。

 明日はどんな美味しいものが食べられるんだろうか、今日教えてもらった店には必ず行こうなどと話していると、繁華街の真ん中に長蛇の列を発見しました。何か美味しいものの波動を感じた私たちが列の先に行くと、「肉巻焼おにぎり とりあえず」の看板が。


肉巻きおにぎり??

なんか間違ってます

 Yさんによると、焼きおにぎりを大きな肉で海苔みたいに巻いた、名前のまんまのものだそうで、飲んだ帰りに買う宮崎の呑ん兵衛に人気の食べ物だそうです。これは東京の呑ん兵衛も食べなくてはと、列に並ぶことこと数分、あと3人、2人と期待が高まるなかノドを鳴らしていると、私たちのところで売り切れになってしまいました。この「肉巻焼おにぎり」を手にすることが、宮崎滞在中のミッションに加えられたことは言うまでもありません。

(つづく)

〈今回行ったお店リスト〉
「炙りものまかない料理 ひよし」
住所 宮崎市中央通3-22 クボタビル1F
電話 0985-29-5580
営業時間 昼11:30〜13:30 夜17:30〜23:30(LO 22:30)
定休日 日曜日(月曜日が祝日の場合は日曜日営業、月曜日休)

「Bar Vintage」
住所 宮崎県宮崎市中央通8-5 セイザンビル4F
電話 0985-31-2377
営業時間 20:00〜翌4:00以上
定休日 年中夢中(本人談)
※オーナー大富さんのご厚意で、「Narinari.comを見て来た」と言うと、カクテルを一杯サービスしてくれるそうです。

「とりあえず」
住所 宮崎県宮崎市中央通1-6 トマトビル1F
電話 0985-20-2900
営業時間 19:00〜翌2:30
定休日 不定休




 

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