アメリカで駄菓子は受け入れられる?

2004/09/16(Thu) 13:18

セントルイスで日本を知る?

 セントルイスは日本から10万キロも離れた、アメリカの中西部に位置する都市です。カリフォルニアのように何世代も日系の文化が根付いているワケでもなく、ニューヨークやシカゴのように日本企業が駐在員を多く派遣しているワケでもないこの土地。なのにセントルイスでは、毎年3日間に渡って大規模な日本祭が開催されているのです。さすがにご存じの方は少ないと思いますが(笑)。

 実はセントルイスには北米一の広さと言われる日本庭園が存在します。「ミズーリ・ボタニカル・ガーデン」という植物園の敷地内にあるこの庭園は、大きな池を取り囲んだ「池泉廻遊式」の本格的なお庭。「清和園」と名づけられています。1972年に、とある日系人同盟がボタニカル・ガーデンに建設を提案。それがきっかけとなり、大規模な庭園がアメリカのど真ん中に作られることになったのです。デザインは当時、カリフォルニア大学のロスアンゼルス校で、日本美術と建設学を教えていたカワナ・コウイチ氏に委託しました。カワナ氏は1977年に庭園が完成した後もメンテナンスなどで「清和園」と深くかかわり続けたとか。1990年にお亡くなりになるまで、ボタニカル・ガーデンには何回も足を運んだそうです。

 この日本庭園には茶室や石庭、美しい弧を描いた太鼓橋などが配置されています。ゆっくりと池の周りの砂利道を歩けば、アメリカにいるのに和の世界にとっぷりとひたることが出来るのです。なんだか、禅の世界も遠くないような気分(笑)。

日本祭は今年で28回目

 このミズーリ・ボタニカル・ガーデンで、毎年9月の最初の3連休(Labor DayWeekend)に日本祭が開催されています。今年でなんと28回目。入場者数が平均25,000〜32,000人と言いますから、セントルイス市民にとってもかなりの人気イベントだと言えそうです。実際この3連休のセントルイスは、ほかにも航空機フェアやギリシャ祭など、イベントが目白押しだったのですが、その中でも日本祭は特別な位置づけとされている様子です。この週末はガーデンの入場料が通常の倍になり、決して安いとはいえないのに家族総出で訪れる人々がほとんど。すごいことです。

 催しとしては、お神輿かつぎ、山車引き、御諏訪太鼓のコンサート(セントルイスは長野県の諏訪市と姉妹都市)、盆踊り、生け花展示、日本の遊び紹介、武道デモンストレーション、焼き鳥やお好み焼きの食べ物屋台、ティー・セレモニー(茶道)などなど……。とにかく盛り沢山です。これらイベントにはセントルイス在住の日本人が多く参加しますが、もちろん地元アメリカの人たちも太鼓を見事に打ち鳴らしていたり、着物姿でお茶を立てていたり…。日本文化はセントルイスに浸透している様子です。

駄菓子屋をやろう!

 さて、この日本祭に毎年参加している、とあるグループが今年、なんと日本の駄菓子屋をセントルイスで再現しよう! と思い立ちました。子供好きな、自分たちも童心を忘れない面々。「子供が楽しめて、日本独特の何か」と、かなり自然な流れで駄菓子屋がチョイスされた模様です。何か月も前から計画し、話し合い、買い付けに走り……。お祭り初日には、ボタニカル・ガーデンの一角に立派な日本風の駄菓子屋テントを立ち上げたのでした。


準備に忙しいメンバー

商品の品揃えを最終チェック

 しかしこの企画、もちろん不安もありました。いったいアメリカ人に日本の駄菓子は通用するのか? 受けるのか? みんなが心なし思っていたことです。しかも正統な日本の駄菓子屋を再現するために、全商品が日本円のみでの販売。店の隣に「両替所」を作り、そこでドルを日本円(オモチャですけどね)にしなければならないというシステムです。果たして、こんな面倒なことをして合理的主義のアメリカ人の客足が減らなければ良いけれど……。

 それでも駄菓子屋オープンの当日から、メンバー全員が気合を入れてがんばりました。


ねじりハチマキの若旦那

着物にかっぽう着の女将

 コスチュームに凝る凝る。ちなみに女将の女性は、後でその姿のままマクドナルド行って、かなり場違いな自分に気が付いたのだとか……(笑)。まあとにかく、駄菓子屋開店です!

 「いらっしゃーい! いらっしゃーい!」

 呼び声に誘われてか、人がだんだん集まってきました。一度店の前を素通りした人たちも好奇心が手伝ってか、テントの下にやって来ました。そしてお店の中の商品にじっくり見入っています。興味津々。そんなこんなで、1〜2時間もすると……。


人が来るわ来るわ

ワラワラ

 子どもがキャンディーひとつを大切そうに買っていったり、どっさりと1,000円分ぐらい一度にお買い上げする人がいたり、とにかく人の流れがまったく途絶えません。人が人を呼んでいる状態。天気がかなり暑かったので、店の前に置いたラムネも飛ぶように売れます。ラムネのボトルの開け方がアメリカ人にはちょっと難しそうでしたが、店員がポンッとビー玉を落としてあげると「オー! Cool!」と喜んでいます。味が気に入って2本、3本と続けて買い求める人も……。すごすぎる。

 初日で売り切れる商品が一部出てしまった、という嬉しい悲鳴も聞こえましたが、2日目も3日目も大賑わい。


次の日も人、人

さらにその次の日も……

 売れてますよ、日本の駄菓子! うまい棒や、よっちゃんイカや、あわ玉キャンディーや、きなこ棒や、前田のクラッカーが!! 日本円のみでの販売というシステムも、すんなり受け入れられて、子どもと一緒に「本当に日本でお買い物しているみたい〜」と、喜ぶお母さんなどもいました。


真剣なお客さん

選ぶのが楽しそう

 結果として、大、大、大盛況でした。懐かしそうに駄菓子を買い求める日本人の数以上に、物珍しげに、かつ楽しそうに一つ一つの駄菓子を吟味して買い物カゴに入れるアメリカ人が沢山お店に来てくれた、とのことでした。

 寿司や天ぷらも良いですが、こうした日本の大衆的な食文化が、もっと広がっていくと嬉しいですね。




 

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