富野監督がSACLAとガンダム語る「せっかくだから真剣に考えてみた」。

2013/09/25 13:39 Written by Narinari.com編集部

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独立行政法人理化学研究所 放射光科学総合研究センター(以下、理研 放射光センター)は、世界最先端施設であるX線自由電子レーザー施設「SACLA(サクラ)」のスペシャルサイト内「SACLA×GENIUS」のコーナーで、第2回目のゲストとなる、「機動戦士ガンダム」などを手がけたアニメーション監督の富野由悠季氏と石川哲也センター長との対談を掲載した(http://xfel.riken.jp/pr/sacla/?cat=2)。

X線自由電子レーザー施設「SACLA」は、「ミリ(mm)」→「マイクロ(micro)」→「ナノ(nano)」に続く小ささを表す単位「ピコ(pico)」の世界を見ることができる、いわばX線を使った“巨大な顕微鏡”。原子や細胞レべルも観察できることから、生命の神秘の解析や、医療の発展の研究などに貢献している世界最先端の施設だ。

世界一小さいものが見えるX線レーザー施設「SACLA」は、日本の未来に目覚ましい発展をもたらすと期待されていまるが、その仕組みの難解さから、 一般の人たちに内容を十分に伝えることが非常に困難だった。そこで理研 放射光センターは今年7月にスペシャルサイトをオープン。8月に各界の著名人をゲストに迎え、ピコの世界で見てみたいモノや「SACLA」への期待、魅力を語るコーナー「SACLA×GENIUS」を開設。第1回は北野武を迎えていた。

そしてこのたび、第2回となるゲストとして、「僕は基本的にロケットとか宇宙にしか興味がない人間ですから」と自ら公言する、「機動戦士ガンダム」の生みの親である富野氏が登場。富野監督ならではの「SACLA」とアニメーション技術をシンクロさせた話題から、ジブリ作品の最新映画「風立ちぬ」に描かれたエンジニアリングの現実と宮崎駿氏との共通点にまで広がり、終始熱気を帯びた会話が繰り広げられた。

ちなみに、富野氏と石川センター長の対談は、2001年冬に、「月刊ガンダムエース」(角川書店)で実現。今回はそれ以来、2年振りの再会となる。以下、インタビュー内容を一部抜粋。

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石川:富野監督は理系の研究に造詣が深いですが、昔から興味があったのですか?
富野:僕は怠け者だったから理系に行けなかっただけで、基本的にロケットとか宇宙にしか興味がない人間ですから。 高校生のときに数学の成績があまりにも悪くて、映画の道を選んだ。現在の僕は挫折の結果というわけです (笑)。
石川:「SACLA」に来てくださったとき、「これはインフラだ」と仰っていましたよね。それは本当に監督ならではの慧眼 (けいがん)だと思いました。
富の:あの取材でわかったことは、科学技術というのは「SACLA」のような施設で事象を精緻に観察して、物質の癖を徹底的に理解したうえで研究していかなければならないのではないかということです。乱暴な言い方をすると、 原子力はそこがなくて実用化してしまったがために、みんな未だにどう扱ったらいいのか慌てふためいている。 使用することでどんなことが起こるかちゃんとわかっていなかったから、作ってしまってから困り果てることになった。
石川:実用化の前に、「まず観察し、理解すべし」と。

富野:実を言うと、今日話したようなことは、新作の制作にあたって考えたことなんですよ。(中略)今回の取材班 から、事前に質問をもらいましたよね。
MC:はい。「『ガンダム』に「SACLA」を登場させるとしたら、どんなかたちですか?」という質問ですね。
富野:これはとても象徴的な質問です。「こんなことを聞くなんて今のメディア人はレベルが低いよな」って初めは思ったんだけど(笑)。せっかくだから真剣に考えてみたんです。そこで初めて、「ガンダム」というアニメについて、僕なりの簡潔な言い方を見つけました。
石川:それは私もぜひ知りたいですね。
富野:こうです。「SACLAはあまりにもリアルすぎる技術なので登場することはあり得ません。『ガンダム』のような ロボットアニメはファンタジーですから、魔法を扱うのです。以上」。
MC:しかし、富野監督が“ファンタジー”と呼ぶ「ガンダム」は、これまで“リアルロボットアニメ”と評されてきました。
富野:その言葉がどれだけ嘘かということです。旧来のロボットアニメにあったような、「天才博士が一人ですべてを 作り上げた」という世界観ではなく、メカニックがいて、設計者がいて、という当然のことをやったからそう言われただけで、あれが現実化されるとは思っていませんよ。やっぱり、表現するっていうことは、根源的に「魔法」を扱うことを指すのです。それが自分にとってはっきり言葉としてわかっただけでも、この質問はありがたかったですよ(笑)。

石川:制作中の新作にそうした考えが反映されているというのは?
富野:今の世界の状況では、物語をリアリズムで組み立てると、「終末論」とか「人間は限界だ」って結論にしかならないのですよ。そこを突破していく展開をリアルにやるなら、暴力的にやるしかない。例えば、ヒトラーの再来が世界を席巻しているとか。でも、そんなフィクションが気持ち良いわけがない。特にロボットアニメというジャンルは20年後、30年後の未来を担ってくれる子供たちに向けて作るものだから、自慢気に語っちゃいけないと思うんです。だから、そういう考えをすべて捨てて、「これだったら」という物語を見つけた。その考えに至ったことで、 次の新作はかなり自信を持って作っています。

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対談の途中、富野監督がエンジニアリングに対して関心が高い理由について「父親が戦時中に戦闘機や爆撃機の部品を作るエンジニアだった」ことを明かすと、話は映画「風立ちぬ」の話題に。富野監督は「本当に見事な映画です。映画史上初めて、近代航空史を、そして技術者の苦悩を正面から描いた映画」と称賛し、ラストシーンを語りながら、感極まり涙する場面もあった。

石川センター長も富野監督と再会し、「科学技術が持っている矛盾について改めて気づかされた」と感慨深く述べていた。

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