地上で応用できる「宇宙医学」、宇宙空間で起こる現象は老化と類似。

2012/11/20 13:30 Written by

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1961年にロシアのユーリイ・ガガーリンが人類初の宇宙飛行に成功して以来、50年間で約500人の宇宙飛行士が地球外の世界を体験している。この間、多くの科学技術とともに進化してきたのが「宇宙医学」だ。宇宙医学というと宇宙空間の過酷な環境で生き残るための技術と思われがちだが、もはや宇宙飛行士のためだけにあるものではないという。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月5日、東京都内でシンポジウムを開き、宇宙医学の発展を紹介。1994、98年の2度にわたってスペースシャトルに搭乗した宇宙飛行士の向井千秋さん(JAXA宇宙医学研究センター長)は「宇宙空間で起こる現象は老化で起こる現象と似ている。宇宙医学は究極の予防医学。骨量減少対策や心理リスク管理など、地上の暮らしへの応用が始まっている」と説明した。

◎地上での症状を短時間で観察可能

向井さんによると、宇宙空間では

・骨が骨粗しょう症患者の10倍の速さで弱くなる
・筋肉は寝たきりの人の2倍の速さで弱くなる
・地上で浴びる自然放射線の半年分を1日で浴びる
・精神・心理の問題の顕在化

―などが、一般人よりも健康な宇宙飛行士に起きるという。宇宙医学は当初、これらの予防などを目的としていた。しかし、現在、宇宙医学の研究戦略の一つに加えられているのが「究極の予防医学として地上社会に貢献」だ。

向井さんは「微少重力や宇宙放射線、閉鎖環境・異文化といった宇宙での作業環境では、加齢などによって起きる地上での症状と非常に似ており、それを短時間で観察できる」と説明。こうしたことに対処してきた宇宙医学は、地上社会にも貢献できるのではないかと述べた。

実際、すでに各分野で成果が得られ始めている。この日も、JAXA宇宙医学生物学研究室の大島博室長が、米航空宇宙局(NASA)と共同で行っている骨量減少対策研究について報告し、宇宙飛行士が出発前に行っている食事、運動、服薬などの予防策が、骨粗しょう症患者やその予備群にも有効になるとした。

また、東京女子医科大学東医療センターの大塚邦明病院長(時間医学、老年医学)は、国際宇宙ステーション(ISS)で活動する宇宙飛行士で、心臓自律神経の働きは一時的に低下するものの、6カ月になると回復して地上よりも良好になったこと、概日リズム(サーカディアンリズム)も地上での生活より改善されたことなどを紹介。大塚氏は「宇宙での規則正しい生活が生体リズムを改善させたのだろう。地上でも同じような生活を送れば、乱れた生体リズムを元に戻すことができる」と述べた。

宇宙医学の研究は、星出彰彦宇宙飛行士によってISSの日本の宇宙実験棟「きぼう」でも行われていた。その中でも、宇宙放射線の被ばく研究は原発事故問題に揺れる日本にとって注目であり、実験支援システムの機能検証は遠隔医療・在宅医療などに応用可能だ。今後も“宇宙発”の新たな知見に期待が寄せられる。

※この記事(http://kenko100.jp/news/2012/11/14/02)は、医学新聞社メディカルトリビューンの健康情報サイト「あなたの健康百科」編集部(http://kenko100.jp)が執筆したものです。同編集部の許諾を得て掲載しています。

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