「勝訴」の紙の呼び方やルール、そこには知られざるドラマがあった。

2012/09/19 16:41 Written by

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社会的な注目を集めている裁判のテレビ中継などで、弁護士が「勝訴」と書かれている紙を掲げながら報道陣の前に駆け込んでくるシーンを見たことはあるだろうか。

実はあの勝訴と書かれている紙には正式名称やルールがあり、弁護士がその場で適当に書いたようなものではないのだ。一見、白紙に勝訴と書かれた紙がただ掲げられているだけに思えるが、そこには弁護士業界ならではのしきたりや入念な準備など、知られざるドラマが存在する。

そこで、あの勝訴と書かれた紙が報道陣の前で掲げられるまでの過程やエピソードなどについて、集団訴訟の経験をもつ秋山直人弁護士に聞いてみた。

まず、あの紙は何と呼ばれているのだろうか。

「私が属している弁護団では『ハタ』と呼んでおり、裁判所前でハタを掲げることは『ハタ出し』と呼んでいます。正式には、『判決等即報用手持幡』というらしいのですが、誰もそんな正式名称は使っていません。」

判決が出た瞬間に、弁護士がその場で書いているのだろうか。

「もちろんそんなひまはありません。あらかじめ原告団・弁護団で会議をし、判決の想定をして、『全面勝訴』『勝訴』『一部勝訴』『不当判決』など何種類も用意しておきます。私が属している弁護団では、達筆な原告の方にあらかじめ筆で書いてもらっています。また、広げやすいように上下に持ち手を付けておきます。判決日には、用意したハタを全て持込みます。主任弁護士が手元にリストを置いており、判決の言い渡しを聞いてその場でどのハタを出すかをすぐに指示します。それで、担当の若手弁護士が裁判所前まで走り、指示されたハタを出すわけです。」

判決等即報用手持幡には使用ルールがあるのか。

「裁判所の施設管理上の規則で、裁判所の構内ではハタを出してはいけないことになっています。ですので、裁判所の敷地外に出たところで出さないといけません。注目を集めている事件だと、裁判所の警備の方もハタ出しを予想して、構内で出しやしないかと警戒していますので、制止されないよう裁判所構外までダッシュして出すことになります。ですので、通常は元気の良い若手弁護士が担当に指名されます。」

弁護士の間で何か有名なエピソードはあるか。

「有名というわけではないのですが、私が所属している弁護団では、2006年9月に東京地裁での集団訴訟で違憲判決を取りました。そのときは、使われることはないだろうと誰もが半ば思いながら『違憲判決』のハタを一応用意していたので、まさかこのハタを使うことになるとはと一同感激しました。そのときの報告集会で『違憲判決』のハタを広げてにこにこしている弁護団の写真が翌日の朝刊の記事に使われ、今でも私の事務所に貼ってあります。残念ながら、その事件は高裁で逆転敗訴、最高裁で上告棄却となってしまいましたが・・・。」

ともすると、ただ白紙に裁判結果が書かれているだけかと思いきや、その裏には様々な状況を想定した仕込みなど、知られざる関係者の奮闘ぶりが存在しているようだ。

もし今後、判決等即報用手持幡が掲げられているシーンを目にした際には、その一瞬にかけた人々の入念な準備に思いを巡らせてみるのも面白いのではないだろうか。

◎取材協力弁護士
秋山 直人(あきやま・なおと)
2001年に弁護士登録。所属事務所は現在弁護士7名で、企業法務、各種損害賠償請求、債務整理、不動産関連、契約紛争、消費者問題、離婚・相続等を取り扱っている。
事務所名:山崎・秋山法律事務所

※この記事(http://www.bengo4.com/topics/116)は、無料法律相談・弁護士/法律事務所検索ポータルの弁護士ドットコム トピックス編集部(http://www.bengo4.com/)が執筆したものです。同編集部の許諾を得て掲載しています。

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