たばこない社会目指し新学会「禁煙や分煙では健康被害なくならない」。

2012/07/12 15:37 Written by Narinari.com編集部

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一部の場所での禁煙や分煙では喫煙による健康被害はなくならないとし、たばこそのもののない社会を目指そうと昨年11月、日本タバコフリー学会(代表理事=西宮市保健所・薗潤所長)が設立された。今年7月には特定非営利活動(NPO)法人として承認され、9月には第1回学術大会を開催する。同学会の金子昌弘・副代表理事(東京都予防医学協会健康支援センター呼吸器科部長)に、設立の背景や趣旨、学術大会の見どころなどを聞いた。

◎喫煙者の息や服からの「3次喫煙」は防げない

――日本タバコフリー学会設立の背景は?

 たばこに含まれるニコチンは薬事法で毒薬に指定され、タールの構成成分であるベンゾピレン・ニトロソアミンなどは発がん性が報告されている物質。また、喫煙習慣は麻薬などと同じ薬物依存症の1つで、ニコチン依存症という病気です。

 そのため、禁煙に対しては医学や医療によるアプローチが不可欠で、2006年には禁煙外来が健康保険に適用されました。また、それ以前からも医師を中心とした禁煙推進団体や受動喫煙防止団体などが組織され、さまざまな活動が続けられています。しかし、後述するように、禁煙外来は縛りが多く非実用的で、団体の活動目的はたばこ規制にとどまっているんです。

 例えば、喫煙者がいない家庭の子供の尿中コチニン(ニコチンの代謝産物)濃度と比べ、換気扇の下や屋外で喫煙する家庭の子供では3.2倍、ドアを閉めて屋外で喫煙する家庭の子供では2.0倍というスウェーデンの研究報告もあります(「Pediatrics」2004; 113: e291-295)。数値は低いように見えますが、受動喫煙を防止するための対策を講じても、喫煙者の呼気(息)、衣服、毛髪などに付着した有害物質による「残留たばこ臭(3次喫煙)」までは完全に防ぐことができないというエビデンス(根拠となる研究結果)です。

 こうした事実を踏まえ、たばこそのものをなくすという観点に立ち、たばこのない(たばこフリー)社会の実現という趣旨で本学会を設立しました。昨年11月にNPO法人化に向けた設立総会を開き、今年7月に正式にNPO法人として認められています。


◎学会の「早期解散」が最終目標

――具体的な活動内容や最終目標は?

 まず、たばこ事業法の廃止を訴えていきます。前述した通り、喫煙による健康被害が明らかであるにもかかわらず、たばこの製造・販売は現在のところ合法です。これは、「たばこ事業法」によって手厚く保護されているからで、いわば、国民の健康や生命を犠牲に税収確保を優先させた悪法といえます。そのため、財務省が管轄する同事業法を廃止させ、厚生労働省管轄の「たばこ規制法」を制定させるべき。そのためには、葉タバコ農家の転作やたばこ販売業の転業を奨励する包括的施策、財政的措置が必要です。最も効果的な手段として、たばこ価格の継続的な値上げによる必要財源の確保が考えられます。

 また、先にも述べたように、禁煙外来は非常に縛りが多く、臨床現場では扱いにくい。例えば、禁煙外来の保険適用要件の1つに、「ブリンクマン指数(1日当たりの喫煙本数×喫煙年数)が200以上」とあるが、これは1日20本の喫煙で10年が目安になります。しかし、喫煙本数が少ない女性や喫煙年数が短い若年者ではこれを満たしません。さらに、入院患者の場合、他の施設の外来を受診しなければならない。規制緩和により、受診や治療が幅広く行われるようにしてほしいので、本学会ではたばこ事業法廃止の訴えとともに、禁煙外来に対する規制緩和についても、政治への働き掛けや連携を図っていきたいと思います。

 一方、医療者の立場からは、日常診療や定期健診などを通じた禁煙支援活動を行いたい。喫煙習慣の本質がニコチン依存症と厚労省も認めているにもかかわらず、日常診療や健診などで受診者の喫煙が判明しても、禁煙指導はほとんど行われていません。医療者に対して積極的な禁煙指導の推進を呼び掛けていくことも、本学会の活動の1つに据えたいと思います。こうした活動に取り組み、最終的には本学会の「早期解散」を目指していきます。それはすなわち、たばこフリー社会の実現を意味するのです。


◎たばこ企業を内部告発したWigand氏が講演

――第1回学術大会の見どころは?

 「タバコのない社会を目指そう!」をテーマに今秋、第1回日本タバコフリー学会学術大会(9月16〜17日、神戸市)を開催します。大会の見どころは、米国のたばこ産業の内部告発を描いた映画『インサイダー』のモデル、Jeffrey Wigand氏を迎えること。2日間の大会期間中、学会の顧問でもある同氏には講演やシンポジウムに参加してもらい、今年の世界禁煙デーのテーマでもある「たばこ産業の干渉や策略の阻止」などについて話してもらう予定です。

 また、市民公開講座「女性の宿敵タバコの真実」も見どころの1つ。JTは現在のたばこ離れを食い止めるべく、販路の矛先を若い女性に向けています。これは、かわいらしいパッケージを見れば明らかです。

 一方、女性にとって美容は大きな関心事ですが、化粧品会社の研究によると、喫煙している女性の肌は、喫煙していない人に比べて平均で5歳程度くすみが進んでいるとされています。どんな高級化粧品を使うよりも、禁煙することが肌の若返りの特効薬といえるでしょう。また、喫煙している女性から生まれた子供は出生体重が低く、乳幼児突然死症候群(SIDS)などにかかる確率も高いといいます。

 さらに、女性の肺は男性よりも弱く、同じ喫煙量でも男性より肺がんになりやすいという説があり、女性は一度喫煙し始めるとやめにくいというデータもあります。男性ももちろんですが、女性こそ喫煙習慣をつけるべきではないでしょう。

 本学会は、ようやく7月にNPO法人化が承認され、これから正式に会員や学術大会の演題を募集していきます。医療関係者だけでなく、一般市民にも広く参加を呼び掛け、たばこフリーの社会を目指す運動を広げていきたいと願っています。


※この記事(http://kenko100.jp/news/2012/07/12/01)は、医学新聞社メディカルトリビューンの健康情報サイト「あなたの健康百科」編集部(http://kenko100.jp)が執筆したものです。同編集部の許諾を得て掲載しています。

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